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ちりつもひよ仔

ゲーム、アニメ、映画、小説などの感想とその他好きなものの紹介をしています。

【ここさけ】『心が叫びたがってるんだ』はリアルで残酷な映画だった【感想】

こんにちは中原ひよ仔です。

2016年に話題になった映画『心が叫びたがってるんだ』を今更ながらもレンタルで観たので、ちょっとひねくれた見方での感想を書いていきたいと思います。

 

 

序盤はがんばって観よう!

正直、私は序盤は観ているのが辛かったです。

面白かったのは順ちゃんが幼少期に山の上のお城(=ラブホ)で父親を見つけて母親に報告。

家庭を崩壊させてしまった結果、玉子に呪いをかけられたところまでです。

その後、地域ふれあい交流会の実行委員に決まるなどの流れのところはテンポが悪く観ているのがしんどかったです。

でも、ここは物語の助走のようなもの。

がんばってここを走り抜けた先には感動が待っていました。

 

坂上くんが順ちゃんに「歌なら呪いも関係ないかもしれない」と言ってくれたあたりからは物語が急速におもしろくなっていきます。

坂上くんの王子様っぷりにはキュンキュンしてしまいました。

順ちゃんのがんばりをきちんと見ていてくれて「がんばってるよ」と言ってくれる坂上くん。

「私の周りにはどうして坂上くんがいないんだー! 私にもがんばってるって言ってー!」と泣きそうになってしまいました。

がんばっている人のがんばりを見つけて「がんばってる」と素直に言える人って、間違いなく現代でいう『王子様』ですよね。

順ちゃんの言葉に曲をつけることで歌にして、気持ちを伝えられるようにしてくれた坂上くんは順ちゃんにとっては本当に素敵な王子様だったはずなんです。

惚れちゃうのも納得。

それなのに、坂上くんが好きなのはスクールカースト上位の菜月ちゃんっていうところに現実を見てしまい「あー、なんて残酷な映画なんだ」と思ってしまいました。

もちろんいい意味で、ですよ。

フィクションであるアニメでこういう現実の残酷さを描いてくるのかと驚いたんです。

 

『ここさけ』がリアルで残酷なのはスクールカーストがリアルだから

上の項目でも少し語りましたが、この記事で書きたいことナンバーワンはこれです。

キラキラした綺麗な青春映画というには、この映画はちょっとリアルですし、残酷すぎます。

それは物語のいろいろなところで見られるスクールカーストが原因なのではないかと思います。

恋愛関係

坂上くんが恋をしていたのは、元カノでもある菜月ちゃん。

この子はチア部のエースでとってもかわいい女の子。

坂上くんは中学時代に菜月ちゃんと付き合っていたんですが、自然消滅しています。

坂上くんは付き合っていた当時から菜月ちゃんとは「釣り合っていない」と思っていたことを告白する台詞があります。

坂上くんがそう思ったのって、菜月ちゃんがスクールカースト上位の人間だからですよね。

 

順ちゃんにとっての王子様だった坂上くんが恋をしているのはスクールカースト上位の菜月ちゃんなんです。

順ちゃんはどう考えてもスクールカーストでは最下層に位置する女の子なんです。

そんな子がどう逆立ちしたって、スクールカースト上位の女の子に勝てるわけないんですよ。

悲しいですね。

でも、リアルだってそうです。

スクールカーストが上位ってだけで、女の子も男の子もプラスの魅力がついてしまう。

それが学校の不思議で、残酷なところだと思います。

そして、この作品ではそれがリアルに描かれています。

 

ラストでは野球部のエースだったのに肘を壊して後輩からもうざがられていた大樹くんに順ちゃんは告白されていますが、大樹くんは元スクールカースト上位の人間です。

今はスクールカーストの中の上あたりの人なのではないでしょうか?

作中でもチアのエースと野球部のエースが付き合うのは通例というような話をされたときに大樹くんはもう自分はエースじゃないという返しをしています。

つまり、大樹くんはチアのエースである菜月ちゃんとはもう釣り合う人間ではなくなったということなんですよね。

スクールカースト中の上程度の大樹くんが、ミュージカル成功によってスクールカースト最下層から脱却しているであろう順ちゃんを好きになるのは妥当だといえます。

 

唯一スクールカーストを無視した恋愛をしているのは菜月ちゃんです。

菜月ちゃんは坂上くんをずっと想っていますが、中学のときに付き合っているのかと周囲に聞かれた際に「付き合ってなんかないよ」と否定してしまった過去を持っています。

その結果が自然消滅だったわけですが、菜月ちゃんが交際を否定してしまったのは、中学生だから故の恥ずかしさもあったのかもしれませんが、ひねくれた見方をすると菜月ちゃんも心の底ではスクールカースト上位である自分とスクールカースト下層の人間である坂上くんが付き合っていることを恥ずかしく思っていた可能性がありますよね。

残酷ですが、現実ではよくあることです。

スクールカースト上位の女の子っていうのは大概が優しい男の子をゲットして、早くに幸せな結婚をするんですよ。

菜月ちゃんがスクールカーストでは格差のある坂上くんに恋をしたのは、そういう法則の結果なのではないかと思います。

坂上くんみたいに優しい男の子ってなかなかいませんよね。

高校生の間は「どうして坂上と?」と言われるかもしれませんが、卒業後も長く付き合い結婚までできた場合、間違いなく菜月ちゃんは勝ち組です。

 ミュージカルが受け入れられるまでの過程

ミュージカルを最初に順ちゃんたちの実行委員が提案したときって、クラスメイトのみんなは嫌がるんですよね。

大樹くんは怪我をして野球ができない鬱憤から順ちゃんに当たったようですが、このミュージカルが提案されたとき、きっとクラスの数名は「やってもいいかな」って思ってた人がいると思うんですよ。

でも、スクールカースト上位のチア部の子や野球部が嫌がっている。

だから、「やってもいいかな」と思っている生徒たちは言い出すこともできず、周りに同調して「めんどくさいよね」という顔をしていたのではないでしょうか。

 

これは根拠もなく言っているのではなく、改めて実行委員がミュージカルがやりたいと言ったときのクラスメイトの反応を根拠にしています。

二度目に実行委員がミュージカルをやりたいと言ったときには元スクールカースト上位の大樹くんも順ちゃんと和解して、ミュージカルやりたい派の一員になっています。

そうなれば、スクールカースト上位組の野球部もミュージカルやりたい派に流れますよね。

一旦は「めんどくさい」「いやだ」という雰囲気になりましたが、実行委員としてがんばるスクールカーストトップの菜月ちゃんの友達であるスクールカースト上位のチア部の生徒たちがミュージカルやりたい派宣言をした途端に流れが「やりたい」という流れに変わります。

その後に、坂上の友達のオタクも「やりたい」と名乗りをあげていますが、クラスの流れを変えたのはきっとスクールカーストトップのミュージカルやりたい派宣言かと思われます。

順ちゃんの歌声に心を動かされていた生徒はきっと他にも多くいたはずなのに、最初は「めんどくさい」「いやだ」という雰囲気でふるまっていたのではないでしょうか。

順ちゃんの歌声は素晴らしいものでしたが、それだけでは全員を導いていくことはできないんですよね。

スクールカースト上位の向いた方向をみんなが見るというリアルさに残酷だなあと思わずにはいられませんでした。

 

ヘイトの管理がうますぎる

順ちゃんをけなした大樹くん。

坂上くんの想いを知って当日に主役を投げ出そうとした順ちゃん。

あんなに王子様のようにしていたくせに順ちゃんが好きじゃなかった坂上くん。

順ちゃんを応援すると言いながらも坂上くんへの想いを捨てきれない菜月ちゃん。

 

作品内で「え~?」と不満になることが多々あったんですが、それは人間のもつリアルな悪い部分を描写していたから故だと思います。

そのリアルさは素晴らしいものなんですが、この描写によってたまったヘイトをそのままにして終わらせたら「はあああ? なんだこの映画」で終わってしまいます。

でも「ここさけ」はこのヘイトを消化させるのがうますぎました。

 

大樹くんは後輩にうざがられていることも判明しますし、そんな自分を反省して、仕切りなおさせてくれと頭を下げます。その後も一生懸命な姿にもうヘイトなんて感じませんよね。

順ちゃんは途中からミュージカルに出て堂々と素晴らしい歌を歌い切ったことでヘイトなんて吹き飛びました。

坂上くんと菜月ちゃんへのヘイトは順ちゃんがラブホで叫びまくった悪口によって、「そうだそうだ!」という感情になり、全部消えてなくなりました。

 

そして、最後のあの歌。あの歌でもう全部のもやもやはきれいさっぱり浄化されました。

映画でも舞台でも歌を入れると盛り上がるんですよ。

ひねくれ者の私は「歌なんて入れて無理矢理感動させようとしやがってー」と観る前は思っていたのですが、実際にあの歌を聴いたらもう涙が止まりませんでした。

順ちゃんが涙をぬぐったのにももう本当に泣きました。

映画を観るときにいろいろな感情を抱きますよね。

私はなにか思うたびに「どうしてそう思ったんだろう」と考えるんですが、この歌で感動した理由なんて私にはわかりませんでした。

苦労して完成させたミュージカルが立派に終わったことに感動したのではないと思うんです。

ただただ、この歌に涙が出たんです。

物語を観たからこそ泣けたと思うんですが、きっとあの歌をなにも知らない状態で聴いていただけでも泣きそうになっていたと思うんです。

本当にこの歌そのものが素晴らしいもので、この歌がこの作品の評価を底上げしているのだろうと思いました。

 

まとめ

いろいろとひねたことを書きましたが、美しい絵で語られる物語は高校生のリアルを描きながら、人間のきれいな部分と汚い部分を魅せてくれるものでした。

 

「言葉は人を傷つけるんだから! 絶対取り戻せないんだから!」と叫ぶ順ちゃんの言葉は胸に響くものでした。

言葉って簡単に扱えるものだからこそ、うっかりしてしまうことがあるんですよね。

言葉の力のいい部分と悪い部分もこの映画では描かれていたと思います。

 

話題作ですので、今更私が言うものでもないのかもしれませんが、本当にオススメな映画です。

高校生のリアルを見て「あー、あるあるー」と言いたい方にも、ただただ泣きたい方にも観ていただきたいです!

 

   

 

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